2013年08月22日
・東京の萩原です。
以前にもこのブログに書いたが、大学卒業後に、小学生以来の志望だった讀賣新聞社会部記者になった。その後、ゆえあってキヤノン宣伝部に転職し、主にカメラの広告制作を担当した。
30年間に渡るキヤノン宣伝部在籍中、実に数多くのプロ写真家の皆さんから教えを受け、仕事上の協力をいただき、広告関係の各賞を受賞することもできた。写真家諸氏に感謝を申しあげたい。
というわけで、私を育て、支援してくれた写真家諸氏への私自身からの、いわば恩返しとして、下記のような、極めてユニークな写真展を企画し、プロデュースした。写真展概要をご覧ください。
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『いのち写真展』開催のお知らせ
~5人の写真家のはじまりと現在~
いま、私たちを取り巻くあらゆる領域において、「いのち」の尊さが問い直されているのではないでしょうか。人間のいのち、自然界のいのち、地球のいのちなどが、多くの危機に瀕しつつあります。
得意分野が異なる5人のプロ写真家が、それぞれの「初期の作品」と「今の作品」を展観し、「いのち」の大切さを訴えかけます。
実力派と呼ばれている著名プロ写真家たちの、歩んできた軌跡と変遷の全てを開示するという、極めてユニークな企画写真展です。
◆タイトル:『いのち写真展』~5人の写真家のはじまりと現在~
◆展示内容:出展写真家の「初期の作品」と「今の作品」を、各数点ずつ展示
◆会場:キヤノンギャラリー銀座・梅田・名古屋・仙台
◆開催期間:
・銀座:9月5日(木)~9月11日(水)
[※アクセス]
・梅田:9月19日(木)~9月25日(水)
[※アクセス]
・名古屋:10月31日(木)~11月13日(水)
[※アクセス]
・仙台:12月12日(木)~12月24日(火)
[※アクセス]
◆出展写真家:西宮正明、金沢 靖、石川賢冶、市原 基、桃井和馬
◆主催:仁の会 / ◆企画・運営:いのち写真展実行委員会
◆協力:
・伊東英夫(愛育出版 社長)、江永浩和(アートディレクター)、
・金井逸夫(元 ビデオプロモーション社長)、島本脩二(編集者)
・萩原優治(元 キヤノン宣伝部)、宗雪雅幸(元 富士フィルム社長)
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■「仁の会」(ひとの会)■
高野仁太郎氏(1914年~2006年:オリオンプレス創業者/元社主)の仁徳を慕って集まった、第一線で活躍するプロ写真家の任意団体。それぞれ、得意とする分野は異なるが、お互いに情報を交換し、啓発し合っている特異な集団である。
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2013年07月26日
・東京の萩原です。
自分自身の生活全般をすら、考え直さざるを得ないような、非常に多くの問題点を付きつけられた。怖い映画である。
20世紀に生み出された二つのテクノロジーである「遺伝子組み換え」と「原子力」には、三つの共通点がある。それは、(1)後戻りができないこと(2)既に世界中に拡散していること(3)体内に蓄積されやすいこと。なのである。
2009年、フランスで、ある動物実験が極秘裏に開始された。ラットの餌に、米・モンサント社が商業化している遺伝子組み換えトウモロコシ、同じくモンサント社製農薬(ラウンドアップ)を、いくつかの組み合わせで混ぜて与えた長期実験だった。実験期間は、ラットの寿命に相当する2年間。
現在、市場に流通している遺伝子組み換え食品の安全基準は、ラットに遺伝子組み換え作物を3か月間与え続けても問題がない、という実験結果を基にしている。人間の寿命を80歳とすれば、ラットの3か月は人間の10歳に過ぎない。カメラは2年間に渡る実験を撮影し、実験対象のラットに腫瘍の発生率、死亡率の上昇が頻出する事実を冷徹に描き出している。
2011年3月11日に発生した東日本大震災の直後に、東京電力福島第一原子力発電所が大爆発し、メルトダウンした。これは、単なる自然災害ではなく、人災と言うべきであろう。その張本人は日本政府と東京電力に帰結すると、巷間で言われている。
放射線の許容量が、全世界統一で年間1ミリシーベルトと決められているにも拘らず、何の話し合いもなく一気に20ミリシーベルトにしてしまった、ということは、原子炉を持つ国としての許されざる、かつ巧妙なる"犯罪"であろう。
東電福島第一原発周辺住民の放射能汚染問題は、これから深刻な事態が予想される。核と遺伝子の共通性を示す映像に深い懊悩を感じさせられた。1986年4月に旧・ソ連邦(現・ウクライナ)チェルノブイリ原子力発電所4号機で起きた爆発事故。30年近く経っても立ち入り禁止区域が厳然として存在し、住民は帰還できない。
世界における原子炉の保有数は、第1位のアメリカ合衆国(104基)に次いで、フランスが第2位(58基)、日本が第3位(54基)である。
日本では東日本大震災後、安全調査のため2012年5月に、全ての原発の運転が停止したが、同年7月に福井県の関西電力大飯原発が再稼働した。2013年3月に誕生した自民党・安倍晋三政権は、民主党政権が打ち出していた「2030年までに原発ゼロ」という脱原発政策の見直しを鮮明にしている。福島原発処理が終らないのに。
この映画のジャン=ポール・ジョー監督は、次のように語っている。
暴走するテクノロジー、その先にどんな世界が待っているのだろうか?あなたは、次の世代にどんな世界を残したいですか?
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2013年07月08日
・東京の萩原です。
今を去る31年前である1982年春に小学館から発行されて、37刷92万部に達する異色のベストセラー「日本国憲法」が、初めて版を改め、ソフトカバー化し、コンビニに並んだ。
憲法前文と全103条を大きな活字で組み、漢字全てにルビを振った。憲法制定の経緯や解説をつけない代わりに、見開き写真29葉を掲載してある。草間彌生ばりの表紙の赤い水玉模様が印象的。当時、装丁の斬新さも話題となった。
刊行された1982年は、自民党が防衛力増強や自主憲法制定を盛り込んだ運動方針を決め、中曽根康弘政権が発足した、現在の政治情勢に近い、極めて保守回帰色の強い年だった。
この異色の出版企画を発案したのは、当時、小学館の写真雑誌「写楽」編集部員だった島本脩二さん(66歳)。病気で休んでいた時「自分の軸って何なんだろう」と悩み込み、はたと思いついたのが、学生時代に学んだ日本国憲法だったそうである。
手許の六法全書を繰り、憲法前文を読み、先を見通すような精神に貫かれていることを再認識した。新聞社による世論調査で4割の国民が憲法を読んだことがないことを知り、写真を多用し、馴染みやすい装丁でと、一気に企画書を書き上げたという。
憲法施行35年後に当る1982年に初版を発行。背表紙には「一家に一冊」というスローガンコピーが刷り込まれた。最近では、毎年5千部前後が静かに売れていた。まさに永遠の定番本化した。
昨年春、自民党が本格的な改憲草案を発表。年末には憲法改革を旗印にする安倍晋三内閣が誕生した。自民党の改憲草案は表現の自由を巡り、新たな規定を加えた。「公益および公の秩序を害することを目的とした活動は認められない」という規制色の強いもの。
小学館の編集者たちは、根源的な言論や出版の自由が脅かされるのでは、と危惧した。改憲論議が進む中、編集会議にて出てきた企画が「日本国憲法」を今の世代に読んでもらおう、という改版案である。
この出版企画には若者向け書籍の販売に力を入れるセブンイレブンが協力することになり、6月20日から各店頭に並んでいる。定価は税抜きで500円。31年前より200円安い。一気に9万部を印刷する。
私自身は初版の企画発案者である島本脩二さんとは旧知の仲。前述の如く、島本脩二さんは当時、小学館の写真雑誌「写楽」編集部に所属しておられた。当時、キヤノン宣伝部に在籍していた私が無理難題を持ちかけていたのではないか、と旧聞の暴露(笑)を怖れる次第である。
当の島本脩二さんは「累積部数100万部を超えるのは、編集者として誇りであるし、嬉しい限りである。でも、この本を再び売らなければならない状況を考えると、複雑な心境です」と、静かに語っている。
改憲気運が高まっている今だから、より多くの人々に読んでほしい。
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2013年05月28日
・東京の萩原です。
2013年度アカデミー賞の作品賞を「アルゴ」が受賞した。下馬評では「リンカーン」が最有力作品と言われていた。
その理由としては、アカデミー賞を運営しているのは、ハリウッドの映画プロデューサーたちが組織した団体であり、ユダヤ人系の団体ということである。そこで、「リンカーン」のスティーブン・スピルバーグ監督自身がユダヤ系ということと、いまや世界最強の映画監督である、ということで「リンカーン」最有力説となった。
しかし、両作品を観た私自身は「アルゴ」の方が、映画としての完成度とエンタテーメント性が高いと感じた。これは、著名映画評論家たちに挑戦する(笑)などという大それたことでは、決してない。単なる感覚である。
映画「アルゴ」は、1970年代に発生した在イラン・アメリカ大使館占拠人質事件の陰にあった実話を基にした作品である。現今のハリウッド映画の主流の一角を占める、いわゆる"CIAもの"ではあるが、実にスリリングでスピーディ。映画の醍醐味を味わわせてくれる。
実際に起こった現代史上の事件を下敷きにしているわけなので、結末は誰にも解っているのに、ハラハラドキドキの連続で、実に心臓に悪い。掌が汗びっしょり。
これに較べると「リンカーン」は、余りに正攻法作品である。初代大統領のジョージ・ワシントンから第44代の現大統領バラク・H・オバマまでの歴代米国大統領で最も"高人気度"の第16代エイブラハム・リンカーンをヒューチャーしたわけなので、内容的には硬くならざるを得ない。政治家としてのリンカーン像を画いている。
両作品とも"人間力"を前面に押し出している点は、大いに評価したい。映画って、ほんとに、良いですねー!
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2013年04月24日
・東京の萩原です。
4月初めの日曜日の午後、東京都小平市にあるルネ小平という公共施設にて開催された手作りヴァイオリンの作品展示会に出かけたが、なかなか面白い体験だった。
このイベントに誘ってくれたのは、キヤノン宣伝部の後輩であるH.T氏である。私は讀賣新聞社会部記者を経て、キヤノンに入社し、在職中の殆どを宣伝部に在籍した。
ただし、H.T氏は海外宣伝担当で、私は国内宣伝担当で、所在地も、年齢も違うので、余り交流はなかった。
ところが、昨秋、宣伝部OBならびにOGを集めた懇親会を開催し、その席上で、H.T氏からヴァイオリン作りに挑戦中であるという、実に興味深い話を聴いた。
前置きが長くなったが、さて手作りヴァイオリンである。
今回、H.T氏が製作したヴァイオリンのモデルは、グァルネリデルジェス1742年製アラートというヴァイオリンで、製作期間は、2009年12月から2013年3月までの3年4か月間だとか。まさに気の遠くなるような、長期間である。
おおよその工程をH.T氏に聴いたが、最初は原木を削って板を作る段階からヴァイオリン製作が始まるそうである。
今回の展示会では、20丁の完成品から選抜された10丁が展示されていた。展次会後半では、選抜された作品のみ、プロのヴァイオリニストによって短時間の演奏がなされ、100人を超える聴衆を楽しませてくれた。アヴェ・マリア、白鳥の湖、ハンガリー舞曲など、ヴァイオリンに向いた小品が演奏された。若干の音色の差など解らず、まるでストラディバリウスなみに聴こえた次第である。
帰宅後、次女に、この手作りヴァイオリンの話をしたら、「お父さんも他人と違ったことをすれば良いのに。書籍の編集やコピーライター養成教室の講師や写真展の企画などは、仕事の延長みたいで、サプライズを感じない」と言われてしまった。些か、耳に痛いことではある。
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