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クルーズコレクション

負の歴史を学び、継承するためのスタディーツアー ~世界遺産 アウシュヴィッツ強制収容所へ~

2020年5月23日

アウシュヴィッツ強制収容所(ポーランド)

第二次世界大戦中に当時ポーランドを占領していたナチス・ドイツによって建設された、アウシュヴィッツ・ビルケナウ強制収容所。ここにはユダヤ人をはじめとする多くの人びとが捕虜として収容され、過酷な労働を強いられたのちに虐殺されました。 なぜヨーロッパ全土で600万を超えるともいわれる犠牲者を生みだした残忍な大虐殺「ホロコースト」は起こってしまったのか、そして”アウシュヴィッツ”とはどんな場所だったのか――ピースボートクルーズでは、この凄惨な歴史や戦後の戦争責任に対する姿勢について学び、未来へと活かすためのスタディーツアーを毎年行っています。

文・構成/編集部 写真/PEACEBOAT

かつてのポーランドの首都で、当時のユダヤ人の暮らしにふれる

ポーランド南部の都市クラクフは、かつて500年以上に渡ってポーランド王国の首都として栄えた街。現在でも街にはその歴史を感じられる多くの建造物が残っており、旧市街地区はユネスコの世界遺産に登録されています。 第二次世界大戦ではナチス・ドイツの支配下に置かれましたが、奇跡的に戦火を免れました。しかしクラクフにも多くのユダヤ人が暮らしており、彼らは深刻な迫害に直面しました。旧ユダヤ人街のカジミエシュ地区を歩くと、そんな戦時下の情景が伝わってきます。またここは、ユダヤ人救命に尽力したオスカー・シンドラーを描いた映画『シンドラーのリスト』のロケ地にもなっています。

負の歴史をいまに伝える収容所を訪ねて

第二次世界大戦中にナチスドイツによって大量虐殺が行われた、アウシュヴィッツ・ビルケナウ強制収容所。「アウシュビッツ」と「ビルケナウ」という2つの収容所から成り立っており、この戦争犯罪を隠すことなく後世に伝えるため、現在では博物館として公開されています。ここは、ヨーロッパ各地から連行されてきた人びとが辿り着く終着地でした。この地まで運ばれて生還した人は、ほとんどいませんでした。 案内してくれるのは、この博物館で唯一の日本人ガイドを務める中谷剛さんです。

当時のまま保存されている建物や遺留品を目の前に、ガイドの中谷さんは、収容所で起きた出来事の解説だけでなく、現代を生きる私たちが直面する社会課題や、一人一人の人間にはコントロールできない集団のエネルギー、人間の弱さと本質など、多角的な視点から、しかし感情に訴えるのではなく冷静に考えられるよう静かに、丁寧に案内してくれます。中谷さんの話に耳を傾けながら施設内をめぐると、亡くなった命の数がすべて「名前のある誰か」だった事実が目の前に浮かびあがります。

収容所の現実

収容所入口のアーチには、「ARBEIT MACHT FREI(働けば自由になる)」という標語が記されており、強制収容所を象徴するスポットのひとつにもなっています。あたかも勤勉に働けば解放されるような印象を持たせながら、この収容所の実態は、常に死と隣り合わせの絶望的なものでした。 収容所内の展示エリアには、当時収容された人びとが身に着けてきた服や靴、持ってきた食器類などが大量に展示されています。展示されているトランクを注意深く見ると、それぞれに名前と住所、貨車の番号が記されていることがわかります。これも、”いつか家に戻ることができるだろう”と収容者を安心させるための細工でした。

ツアーでの体験を深める、若者たちとの交流

アウシュヴィッツ・ビルケナウ博物館があるのは、オシフィエンチムという街です。ナチス政権の政策の一部としてその地名がドイツ語の「アウシュヴィッツ」に変えられ、そちらの名称が浸透してしまいました。ツアーの中では現地の学生と交流する時間もあります。「自分たちの生まれ故郷であるこの街には、豊かな自然があり、きれいな教会があります。映画館も、スケートリンクだってあります。どうか、私たちの愛するこの街から、『アウシュヴィッツ』というイメージだけを持ち帰らないでください」と静かに訴える学生たち。歴史を継承することの難しさを痛感する瞬間です。

Ⓒ yuruki Shiho
“アウシュヴィッツ”が示す、平和への道しるべ

このツアーに合わせ、ドイツ・チュービンゲン大学の学生たちが乗船し、ドイツの「戦後史」をテーマにプログラムを実施することも。ドイツにおける歴史認識が話題になることは少なくありませんが、ドイツに生まれ育った「当事者」たちから直に話を聞く機会は多くありません。ナチスによる加害の歴史と向き合い、決して目をそらさない――学生たちが語る言葉からは、正面から加害と向き合うことで国際社会との信頼関係を築いてきたドイツの歩みが伺えます。現地に赴き、さまざまな人と出会い、時間を共有して対話すること。それは、地球をめぐる船旅だからこそ可能な、かけがえのない経験です。

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