四角大輔さん(作家、環境保護アンバサダー)特別レポート
2025年4月に出航した、アフリカや初夏の北欧、そして壮大なアラスカをめぐる世界一周クルーズ。この特別な航海にご乗船いただいているのは、作家・森の生活者・環境保護アンバサダーとして知られる四角大輔さんです。息子との世界一周クルーズでの体験を、特別レポートとして連載形式でお届けいたします。
四角大輔(作家・森の生活者・環境保護アンバサダー)
レコード会社プロデューサーとして活躍し、その後ニュージーランド湖畔の森でサステナブルな自給自足ライフを営み、場所・時間・お金に縛られず、組織や制度に依存しない生き方を構築。Greenpeace JapanとFairtrade Japanの日本人初アンバサダー、環境省アンバサダーを務める。著書に『超ミニマル・ライフ』『超ミニマル主義』『自由であり続けるために 20代で捨てるべき50のこと』『人生やらなくていいリスト』など多数。
公式ホームページ https://daisukeyosumi.com/
なぜ、4歳の息子と地球一周しているのか
ついに、ぼく自身未到の地、地球最後の辺境と呼ばれるアラスカが迫ってくる。 全107日間、23都市・20カ国を訪れる、ピースボートの旅。横浜港から乗り込んだあと、時速30~35kmという——ママチャリで全力疾走すれば出るような、のんびりした速度で——ひたすら西を目指し、ここまでやって来た。4月から始まった、家族3人での世界一周クルーズは、いよいよ終わりが見えてきた。
これまで、イルカ約60頭、シャチ5~6頭と出会うことができた。そして、一番の感動は約20頭のクジラとの遭遇したこと。海面から突然シュポっと上がる白い潮吹き、真っ黒い頭と背中、そして優雅な尾びれを見せながら潜っていく姿に、何度も歓喜の叫び声をあげた。 なによりも、4歳の息子と一緒に目撃し、手を叩き合って喜び合えたことは、一生忘れることがないだろう。きっと、息子の体にもあの感動は刻み込まれているだろう。
まさに「圧倒的」としか評しようのない、この船旅が終わる前に——震えるほどの熱が全身を支配しているうちに——今回の体験を公開したいと思い立ち、慌ててキーボードを叩いている。 カナダのバンクーバーを出たあと、今はアラスカのシトカという美しい港町を目指し、北米大陸の西海岸沖を北上中だ。 バンクーバーはとても良かった。今回のクルーズの寄港地ベスト2の、ノルウェーのベルゲン、スペインのテネリフェ島に匹敵する魅力に満ちていた。
ぼくが惚れ込む旅先の「偏った」条件とは
ちなみに、「旅するように働き、暮らす」というノマドライフを10年近く営んだぼくは、いつも無意識のうちに「ここに住めるか」という、独断と偏見に満ちた基準で、旅先をジャッジしてしまう。 そういう意味では、冬季の日照時間が極端に少なく(鬱が社会課題のひとつとなっている)、物価が高いバンクーバーとベルゲンには、きっと住むことはないだろう(*あくまで、ぼく個人の考えです)。
余談だが、テネリフェ島は常春と呼ばれる世界有数の恵まれた気候を誇り、ヨーロッパ圏では破格に物価も生活コストも安い(ワインとカプチーノは、過去に訪れた欧米でダントツ安かった——ぼく調べ*)。 さらに、海は美しく、家畜肉を食べないぼくが愛してやまないシーフードが絶品で、飲食店のレベルは高くリーズナブル。 しかも——映画のアニメクリエイターを、20年以上もしている——弟が暮らしているので、リアルに「住める」かもしれない、なんて考えたりもする。
人生を決める「非効率で非生産的な時間」とは
地球を西回りにぐるっと一周するといっても、船は飛行機とは違い、航路を直線では描けない。大陸や島をかわしながら、一筆書きで複数の大きな曲線を描きながら進むしかない。だから、船旅はいいのだ。 しかもピースボートでは、掃除、洗濯、炊事といった家事から完全に解放される(部屋の掃除と食事は無料、洗濯サービスは有料)。
ちなみに、船が備えるStarlinkという高速の衛星ネットを使えば、仕事をやろうと思えばできるが、99%の乗客が休職か退職して乗っている(中高生・大学生も多くいる!)。つまり「なにもしなくていい」のだ。 効率性と生産性が正義とされる、息苦しい現代社会において、これほど非効率で、非生産的な旅のスタイルはない。 繰り返そう。だから、船旅はいいのだ。
一生に一度、自分と家族にプレゼントすべき100日間
多くの方に読んでいただいた拙著の二部作『超ミニマル主義』(前編)と『超ミニマル・ライフ』(後編)で、しつこいくらい書いたが、「非効率で、非生産的な時間」こそが——行きすぎた今の資本主義社会においては——もっとも豊かな時間だ。 断言できる。 この時間をどれだけ持つことできるかで、人生が決まると。
「人生100年時代」と呼ばれる、人類史上もっとも長い寿命を手にしているあなたには、一生に一度は、約100日間の「なにもしない時間」という特別なギフトを味わってほしい。
いや、「この100日間を体験せず、人生を終えてほしくない」。あえて、そう言わせていただきたい。
人生が100年とすると、人生は36,500日となる——つまり、人生の「わずか0.3%」にも満たないのだから。そう考えたら、一歩を踏み出す勇気が湧いてこないだろうか(騙されたと思って、ピースボートに資料請求してみて!*これは宣伝ではなく、ぼくの心からの提案だ)。
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