四角大輔さん(作家、環境保護アンバサダー)特別レポート3
アフリカ、初夏の北欧、そして壮大なアラスカをめぐる世界一周クルーズに、息子とともにご乗船中の四角大輔さん。親子で過ごすかけがえのない時間を綴る特別レポート、第3回をお届けします。
四角大輔(作家・森の生活者・環境保護アンバサダー)
レコード会社プロデューサーとして活躍し、その後ニュージーランド湖畔の森でサステナブルな自給自足ライフを営み、場所・時間・お金に縛られず、組織や制度に依存しない生き方を構築。Greenpeace JapanとFairtrade Japanの日本人初アンバサダー、環境省アンバサダーを務める。著書に『超ミニマル・ライフ』『超ミニマル主義』『自由であり続けるために 20代で捨てるべき50のこと』『人生やらなくていいリスト』など多数。
公式ホームページ https://daisukeyosumi.com/
家族で地球一周するぼくが、人生で後悔していること
「部屋も食事も安全も準備され、行き先も決まっている船旅なんて、退屈なパック旅行と一緒だ」——正直に言おう——2015年に初めてピースボートに乗るまで、ぼくは船旅をなめていた。
2010年から、働きながら世界中を旅するノマドライフを5年以上営み——すでに世界を何周もして——旅の修羅場を何度かくぐり抜けていたぼくは当時、思い上がっていたのだ。 だが、初の船上生活を始めて3日も経たないうちに、ぼくはピースボートに、船旅に、恋をしていた。同時に激しく後悔した。「なぜ、こんな楽しい旅の手段をこれまで知らなかったのか…」と。その時点でぼくは、すでに45歳。
小学校5年生で家族でのカリフォルニア旅行から始まり——高校3年生のときに経験した1年間の米国留学、会社員時代に何度も行った海外出張、15回も通った移住のためのニュージーランド視察、そしてその後の、働きながら世界を旅するノマドライフと——船上生活を体験するチャンスは何度かあったはずなのに。
死ぬまでにやっておくべき2つのこと
思い起こせば、バンライフを営んでいた大学時代と会社員時代に、相棒のバンをフェリーに乗せて何度も北海道に渡ったり、フェリーで八丈島に行く経験はしていたが、わずか1泊なので船上生活とは呼べない。 なにより、これらフェリーとは比較にならないくらい、ピースボートでの船旅は快適で楽しかったのだ。
「死ぬ間際に後悔したくない」という死生観で生きてきたぼくは、当時「これまでの人生で、やらずに後悔したことはない」と豪語していたが、この時初めて「この船旅を、もっと若い頃に知っておきたかった」と悔やんだ。
余談だが、後悔してることをもうひとつ思い出した——30歳まで年齢制限のある「ワーホリ(ワーキングホリデー)」を使わなかったことだ。 このブログは、若い人たちも読むだろうから声を大にして伝えておこう。「ワーホリと船上生活は、死ぬまでに絶対経験すべし!笑」と(ちなみに、ニュージーランドのワーホリは31歳まで!みんな待ってるよー)。
グローバルノマドのくせに飛行機が苦手ってホント?!
旅の達人の多くが「旅の交通手段そのもの」を楽しんでいることだろう。「運転が好き」「飛行機の時間が幸せ」「列車の旅は最高だ」といったように。 告白しよう。ぼくは、旅を心から愛しているに関わらず「移動手段そのもの」をそんなに楽しめる人間じゃないのだ。
長年バンライフを送っておきながら…車を運転は好きではなかった——すぐに眠くなるからだ。空の旅も、2時間以内なら平気だが、それ以上は微妙だ——耐えられるのは7時間以内で、それ以上は苦痛となる。列車の旅が唯一ましだが——それでもわざわざ好んで乗りたいと思わない。 じゃあ、なぜ「車・飛行機・列車」に乗るのか。それは「目的地」があるから——もっと言うなら「その目的地でしか体験できないこと」があるからだ。
我がノマドライフに革命が起きた日
つまり、「乗り物」とは、そこに行くための「手段」に過ぎないということである。 そんなぼくは、ただ運転するだけ(運転が目的)の「ドライブ」を一度をしたことがない。何時間もバンのハンドルを握ることができたのは——「あの美しい湖にいる、あの巨大なニジマスを釣るため」だった。
ぼくが、ピースボートに初めて乗る前は——船にいる時間は、ほかの乗り物と同じで単なる「移動時間=手段」であり——船旅で立ち寄る「寄港地」こそが「旅の目的」という認識でいた。 「船旅はどこでもドアみたいだよ」と聞いていたぼくは、「知らぬま(寝てる間)に移動してくれていて、朝起きると新しい風景が目の前に!そして、明日もまた違う国に行ける!」とワクワクしていたことを思い出す(特にヨーロッパ区間)。
ところが、である。船旅では、「船上生活=移動手段そのもの」が「寄港地=旅の目的地」の何倍も楽しかったのだ。それが衝撃だった。ぼくの旅人生に革命が起きたのだった。(次号はその「船上生活」について)
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