クルーズコレクション

お酒で楽しむ世界一周−2−

2024年1月26日

インタビュー

お酒には長い歴史があり、世界各地の気候や文化に応じてさまざまな変化を遂げてきました。その種類は数え切れないほど存在し、飲み方や組み合わせも無限にあります。美味しいお酒を提案してくれるバーテンダーの中でも、ボトルやシェイカーを投げたり回したり華麗なアクションを行い、美味しいカクテルを提供する技術を持つバーテンダーはフレアバーテンダーと呼ばれます。
2012年に世界一の称号を手にしたマークさんに、旅とお酒のマリアージュを伺いました。

山田 寛之/MARK
2012年『T.G.Iフライデーズ』のバーテンダーチャンピオンシップ世界大会で優勝。ほか、国内外でコンペでの優勝・入賞多数。各地でショーをしながら、世界のお酒の楽しみ方を伝えている。

マークさんが世界一のフレアバーテンダーになるまでの道のりは前編

Social Good Photography, Inc.

世界各地にあるお酒の文化

高級店に行くことだけがバーの楽しみ方とは思いませんが、「いかに安く飲めるか」ばかりを求めるのはもったいないかな。それぞれの土地のお酒に、そこで誕生したストーリーがあります。今は日本でも多くのもの飲めますが、やっぱり現地の持つ空気感、湿気や暑さや、喧騒などが相まったその先にある「味」だと思うんです。旅でバーをめぐって、お酒を楽しむのは五感を伴う食の楽しみ方ですね。あと、バーはコミュニケーションを楽しむ場所でもあります。1軒目なのか、2軒目なのか、食事をしてきたのか、甘いものがいいのか、現地の味を楽しみたいのかなど、そのまま素直にバーテンダーに言ってみてください。お客様の好みの味を作り出すのがバーテンダー側の楽しみなんです。

旅先で見つけてほしいそれぞれの楽しみ方

例えば、イタリアだったら「アペリティーボ」という食前酒を楽しむ文化。夕飯前の時間にバーでお酒を頼むと、生ハムやサラミ、チーズなどのおつまみが、ばんばん無料サービスされるんです。日本のモーニング文化に似ていますね。食前酒は胃を活性化させて、「さぁ、これから食事を始めるぞ」という準備のようなもの。なので、口あたりが軽めのビターな味わいのものが好まれます。
「ビターな味」つまり苦味は、日本ではあまり馴染みのない味覚ですが、海外では身近な味として好まれています。だから食前食として、苦味のあるタイプのリキュールやハーブタイプのリキュールをいただくんです。

メキシコだったらテキーラが有名ですが、日本ではその度数の強さから罰ゲームで飲むイメージでしょうか。いま現地のテキーラは、扱いが全く違います。大ぶりのワイングラスでゆっくりストレートで味わうんです。いいテキーラでは、のどへの引っかかりなんてないし、ワンショットで何千円するものなどもあるんです。
そのあと、メインのレストランへ移動して食事とお酒のマリアージュを楽しむ、という流れですね。僕だったらメキシコに行ったら、タコスやメキシコの豆料理と「マルガリータ」か「パローマ」というテキーラカクテルを一緒に合わせたいですね。

Kozee sasaru

伝統と進化。奥深いお酒の世界

これまで、フレアの大会や個人的な旅行でさまざまな国を訪れましたが、今回ははじめてのクルーズでの旅。船内と寄港地と、目一杯楽しみました。
香港では、「Quinary(クイナリー)」が素晴らしかったですね。アールグレイキャビア・マティーニ(Earl Grey Caviar Martini)は見た目も、そびえたつきめ細やかなフォーム(泡)がとってもキャッチーで。もちろん味も最高。ここはバー初心者の方でも、絶対楽しめます。カリスマ的なバーオーナー兼バーテンダーのアントニオ・レイさんは、香港のバー業界を一気に引き上げた功労者として世界的にも有名な方。他のバーにもきめ細やかな泡を作る技術はありますが、今からそれを出しても「クイナリーのパクリだ」と思われてしまうでしょう。それくらい、唯一無二の存在感を放っていました。

シンガポールでは、まずラッフルズホテルの「Long Bar(ロングバー)」に行きました。シンガポールスリング発祥の地ですから。味は想像通りなんですけど、ありえないほどのエンターテイメント性がありました。もしこれが日本だったら、氷にこだわって、シェイクの時間にこだわって……と、細かに、レシピ通りに、となるでしょうか。でもロングバーでは、鉄製の特性シェイカーマシーンをぶん回してつくる。ときには手を上げたお客様にもガンガン回させてるのに、一杯5,000円。店の外にもオープン前から行列が途切れることないほどの大人気ぶり。「一生に一度の体験をした」という部分が、プライスレスとして思い出になるのは、旅が好きな方であればおわかりになるかと思います。

そうそう、ラッフルズホテルはシンガポールで唯一「ポイ捨てがOKとされている」としても有名です。各テーブルにピーナッツの麻袋が置かれており、好きにつまむことができるのですが、食べたあとの殻は、そのまま床にポイ。想像の10倍以上のピーナッツの殻が床に散らばっていました(笑)やっぱり、行ってみないとわからない発見や楽しさが各所にありました。 お酒やバーって、旅行情報の中でもおまけ扱いのようなところがあり、情報を探すのもちょっと難しいかと思うのですが、その地域の楽しみ方や文化のひとつとして捉えられて、この楽しさが広まっていくと嬉しいですね。ASIA’S 50 BEST BARSや、THE WORLD’S 50 BEST BARSなど、毎年発表されるバーアワードの情報をみてもらうのもよいと思います。

クルーズでのショー体験

船でフレアのショーをしたのは、初めてでした。客船で働いている先輩に情報収集して、これまで体験したことがない「揺れるかもしれない場所」でのショーとして、仕込んでいきました。普段僕は、フレアバーテンダーとして、結婚式やパーティなどでもショーをしているのですが、ピースボートクルーズでのショーはそれらとは全くちがう雰囲気でした。国籍もちがう老若男女の、好奇心のかたまりのような方々が一緒になって楽しもうとしてくれる。エンターテイメント慣れしているというのでしょうか。瓶投げや注ぐたびに色が変わる「レインボーショット」のワークショップも開催したのですが、思ったよりシニアの方々から参加してくれたのが嬉しかったですね。

マークさんはメッセンジャープロジェクトのメンバーとして、2023年にピースボートクルーズに乗船しました。

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