クルーズコレクション

旅先で出会った地雷問題

2021年1月22日

(カンボジア)

旅先で出会った地雷問題

世界では「1時間に1人」が地雷被害にあっているといわれています。地雷は、世界各地で内戦が起こっていた数十年前に埋められたものが多いため、過去のものと思われがち。でも一度埋められた地雷は、「誰かが踏むか、除去されるまで」半永久的にそこにあり続けます。 旅先での出会いが世界への関心を持つきっかけになることは珍しいことではありません。知らなかった世界を知り、できることを考え、行動にうつす――そんなサイクルがうまれるツアーをピースボートクルーズでは実施しています。地雷被害の深刻な国のひとつ、カンボジアへ。人びととの交流を通じて、カンボジアの地雷問題の「今」を学びます。

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文・構成 / 編集部 写真 / PEACE BOAT

旅先で出会った地雷問題
Ⓒ Uchida Kazutoshi

アンコールワットの国が抱くもの

カンボジア北西部に位置するシェムリアップは、世界遺産のアンコールワットがある町として有名です。多くのホテルやレストランが立ち並び、世界中から観光客が押し寄せます。そんな、きらびやかで活気にあふれた風景の中にも、この国が経験した内戦の爪痕を垣間見ることがあります。カンボジアでは1970~90年代にかけて内戦が続き、多くの人びとが犠牲になりました。そして今、戦後復興が進み経済発展する一方で、経済格差が広がり貧困に苦しむ人びとが多く存在します。

旅先で出会った地雷問題

内戦中の1975~79年までカンボジアを支配したポル・ポト政権は、これまでカンボジアが培ってきた文化や宗教を否定、学校教育も禁止し、国民は移住や労働を強制されました。そして数多くの知識人や芸術家、教師、宗教関係者、政策に反対する者を虐殺しました。このポル・ポト政権による処刑場跡はキリング・フィールドと呼ばれ、国内に100か所以上が見つかっています。その1つがシェムリアップにあり、今は鎮魂のために寺院が建てられ、この場所から見つかった遺骨を納めた慰霊塔が建てられています。虐殺の歴史を伝える資料が展示され、カンボジア内戦を学び、考える場となっています。

旅先で出会った地雷問題

和平協定から20年のなかで

和平協定が締結された1991年、カンボジアは戦後復興に向けて動き出しました。内戦中に埋められた地雷は、重要な課題の1つでした。そこで1993年に「カンボジア地雷対策センター(CMAC)」が設立され、地雷除去がスタート。それ以来、CMACは地雷や不発弾の処理、地雷除去員の育成、地雷原で暮らす人びとへの危険回避教育などを続けています。 「CMAC平和博物館」では、内戦中の写真や大量の地雷、不発弾が展示され、カンボジアの地雷問題を詳細に学ぶことができます。地雷事故により大破した車両も並べられていて、地雷の恐ろしさを物語っています。

旅先で出会った地雷問題
Ⓒ Uchida Kazutoshi

地雷原へ

気温40度近い炎天下で、重い防具とヘルメットを装着しておこなわれる地雷除去。ツアーではその現場を見学することも。手に持った金属探知機に反応があると、慎重に地面を掘って地雷が埋まっていないか確認します。一歩間違えば地雷が爆発するおそれがある危険な作業です。ツアーの参加者も安全のために除去員と同じ装備を着けて見学し、いかに大変な作業であるかを実感します。地雷除去には膨大な時間と労力が必要ですが、それでもこれが一番確実に地雷をなくしていく方法です。1つの地雷を除去することが、1人の命や生活を守ることになるのです。

旅先で出会った地雷問題

それでも後を絶たない地雷の被害者たち

被害者が病院での治療の後に必要となるのが義足です。シェムリアップ州立リハビリセンターでは、無料で義足を提供しています。ある被害者は「地雷を踏んだ瞬間のことは何十年たっても忘れられない。でも義足を手に入れて歩けるようになったことが生きる希望になった」と話します。 現地NGOのアンコール障がい者協会は、被害者に職業訓練をおこなっています。代表のソワンタさんはNGO設立時の想いを教えてくれました。「私も地雷で両足を失い一時は自殺も考えましたが、他の被害者が飢えや病気で次々と死んでいくのを目の当たりにして、私が助けなければと決心しました」

Ⓒ Uchida Kazutoshi

地雷が埋まる「希望の村」

シェムリアップの町から車で約3時間、ジャングルの中に佇む小さなスナハイ村に到着します。人びとが各地から移住し、2005年にできた新しい村です。しかし移住後、多くの土地が地雷原だと判明しました。でも村人は「ここは私たちの希望の村」だと言います。地雷が埋まっていようとも、ようやく手に入れた自分たちの土地。ここで農業をすることで、家族が生活できるようになりました。 ピースボートでは、人びとが安全に暮らせるようにと、この村の地雷除去の支援をしています。2016年には地雷除去した土地に小学校も完成しました。定期的に学校を訪問し、子どもたちとの交流を続けています。

旅先で出会った地雷問題

未来へつながる旅を

ピースボートとカンボジアの人が出会い、1998年からはじまった支援は、「カンボジアから地雷をなくそう100円キャンペーン」となりました。街頭募金を中心とするキャンペーンを展開し、2020年末までに200万㎡以上の土地から1,000個以上の地雷と不発弾の除去にいたりました。今日もその地雷のない道を人びとが歩いています。長い年月をかけ、その土地の人びとと、ともに前を見ながら旅を続けるピースボートクルーズ。カンボジアでは、地雷をなくすために力強く取り組んでいる人びとに出会いました。彼らとの交流は、次は自分自身が行動を起こす勇気となるのです。

※ピースボートクルーズでは、本船を一時離脱をし、カンボジアへ訪問するオーバーランドツアーを企画しています。

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