中国をリードする、未来都市
30万人が1,700万人に。1980年に中国初の経済特区に指定されてから約40年。人口が50倍にもなった、深圳(シンセン)。驚異的な成長スピードで上海、北京に次ぐ中国有数の経済都市になった街です。「中国のシリコンバレー」とも呼ばれ、通信機器大手の「ファーウェイ」やIT大手の「テンセント」、EV(電気自動車)の世界トップクラスの「BYD」などが本社を置いています。中国の先端を走るスマートシティというだけでなく、アジア、そして世界からも注目を集める街を歩きます。
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文・構成/多賀秀行 写真/PEACE BOAT
港から海上世界へ
港の顔となる客船ターミナルの外観は、唯一無二。これまでに見たことがないほど特徴的で、無数に並ぶ五角形や六角形に未来都市を感じます。入国審査を済ませ、まずは現地通貨の「元」へと両替。近代的なターミナルを抜け、タクシー乗り場へと向かいます。目的地は「海上世界」。深圳の繁華街のひとつで、夜間も賑わっているエリアです。早速、運転手に行き先を伝えようとするも、立ちはだかる言語の壁。そんな時は、翻訳アプリの出番です。いざ出発と、ほぼ音もなくスルスルと動き出すタクシー。電気自動車特有の静かな走りだしで港を出発します。
車内から外を眺めていると、その国ではどんな車が人気なのか、加えて経済事情も見えてきます。驚いたことに目に入ってくるのは、電気自動車ばかり。さらには車だけでなくバイクも電気を動力としているものばかりです。また次々と現れる高層ビルにも特徴が。途中の階の部分がえぐれていたり、曲線を多用していたりと、斬新なデザインのものが多く、未来的な景観作りに寄与しているのだと感じます。海上世界を目的地としていたものの、近くにローカルレストランを発見。入店しまずは食事をとります。
その店は、観光客向けというよりローカル向けの雰囲気。それだけに英語のメニューはありません。そんな時に助かるのがメニュー横に掲載されている写真です。指をさしながらあれこれ注文していきます。中華料理の特徴のひとつが、提供が早いこと。次々と円卓に運ばれてきます。ピリ辛の牛肉料理、鳥の足を茹でたもの、青菜の炒め物や炒飯などなど、どれもこれも美味しいという他ありません。ペロっとすべてを平らげ、いよいよ海上世界を歩きはじめます。
大きな広場を囲むようにレストランやカフェバーが軒を連ね、その中心にはホテルとして使用されている客船が鎮座。路面店とは別に露天商も多く、アクセサリーなどの雑貨類などが並び、楽しげなムード作りに一役買っています。バーを覗いてみると雰囲気がガラッと変わり、欧米からと思われる旅行者が歩道に溢れるほど賑わいを見せています。特大の液晶テレビで流れるサッカー、片手にはビールと、ヨーロッパにでもきたのかと錯覚するほどです。ぐるりと一巡りした後、閉店間際のカフェに滑り込みます。
毎度恒例にもなっている翻訳アプリを取り出す前に、想像するに「ちょっと待ってて、他のスタッフ呼んでくるから」と、英語ができるスタッフを呼びに行ってくれるスタッフ。新たに呼ばれたスタッフも「時間的にコーヒーはできないけど、レモネードなら」と、優しい笑顔での対応に心がほっこり。周辺のフリースペースやカフェ前のベンチには、多くの若者たちが集まっています。何をしているのかと覗いてみると、皆が皆、スマホを横にしてゲームに興じています。「時代だなぁ」と思うと同時に、治安の良さも感じます。深圳の平均年齢は驚異の30歳。深圳の若者の優しさ、そして今の若者の生活を垣間見ることができた夜でした。
新旧が融合する、南頭古城
翌日。寄港地部のスタッフ(現地ツアーなどを準備している)からおすすめされたのが、南頭古城。港から車で30分ほどの、近代的な街並みの中に突如として現れる、歴史ある地域です。その歴史は、1700年。かつては香港や、マカオなどを管轄してきました。石畳を歩き、門をくぐると今まで見てきた未来都市・深圳とは別世界が。急速な近代化の中で埋もれた古い文化を残すべく、新旧が融合しています。南頭古城に点在する小さな博物館では、歩んできた歴史を垣間見ることができます。中には古い日本地図があったりと、改めて距離の近さを感じます。
メイン通りがあるものの、碁盤目状に近いこともあり、側道、裏道に入っていくと、よりローカルな空気を感じ取ることができます。レンガが積み上げられて築かれた古い建物と時代の先端をゆく建物が絶妙なバランスで混在していて、歩くだけでワクワクしてきます。その風景は若者にも人気でカメラ片手に歩く人の多いこと、多いこと。飲食店、土産屋、雑貨屋・・・とオシャレな店舗の多さに、若者に人気なのも納得です。そして、特筆すべきは、どこもかしこも電子マネーが根付いているということ。勝手に縁がなさそうと想像してしまうような店舗でも貼ってあるのが電子マネーのステッカー。そんな些細なことからも、深圳の勢いの一端を見ることができます。
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