クルーズコレクション

船旅のスペシャリストが語る、ピースボートクルーズの航跡と魅力

累計乗船者数10万人記念

2026年4月に出航した「Voyage123 世界一周クルーズ」をもって、累計乗船者数10万人を突破したピースボートクルーズ。記念すべき4月7日の出航日には、パシフィック・ワールド号の船上で記念式典を開催しました。また、特別ゲストとして船旅のスペシャリスト3名が乗船し、記念トークライブを開催。会場は大盛り上がりとなりました。 その登壇者のお一人でもある航海作家のカナマルトモヨシさんに、当日の熱気を伝えるレポート・コラムを特別に書き下ろしていただきました。

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文・構成:カナマルトモヨシ(航海作家)
日本各地のみならず世界の五大陸をクルーズで訪問した経験を持つ航海作家。世界の客船を紹介する『クルーズシップ・コレクション』での執筆や雑誌『クルーズ』(海事プレス社)に連載記事やクルーズレポートを寄稿している。 カナマルトモヨシさん 公式ブログ

洋上の鼎談(ていだん)を一挙公開

Voyage123最初の寄港地・香港を翌日に控えた4月11日。横浜から乗船した雑誌『クルーズ』編集長・吉田絵里氏、船舶イラストレーター・中村辰美氏、そして航海作家カナマルトモヨシの3名によるトークショーが行われた。その名も「船旅のスペシャリストが語る!ピースボートクルーズの魅力」。世界一周クルーズの見どころだけでなく、歴代チャーター船にまつわる秘話から、100日間の船旅をより楽しむアドバイス、さらにはピースボートクルーズの未来予想(?)まで飛び出した。マニアックかつ興味深い話題が尽きない60分をコラム形式でお届けしたい。

Stacy Hughes

80年代のクルーズは台風シーズンばかり⁉

1983~88年は年に一度、アジア太平洋をめぐる2~3週間のクルーズを行っていたピースボート。その時期は8月下旬から9月中旬の間に集中する。台風シーズンは借り手がなく、それゆえ船のチャーター料が格安だったからだ(おかげで何度も台風に遭遇したが)。この時代でユニークだったチャーター船が「さんふらわあ7」(関西汽船)。これは阪神~沖縄航路の貨客船を改造した客船だがバス・トイレ付きの船室は2つのみ。フェリーのような広い和室やゲームコーナーもあった。現代のクルーズ客船とは毛色がまったく異なる、洋上研修船といった感じだった。

日本の世界一周クルーズのルーツは…

1993年秋、ピースボートは「新さくら丸」(商船三井客船:当時)で東京発着の世界一周クルーズを行うと発表した。日本船としては73年の初代「にっぽん丸」以来、約20年ぶり。当時はバブル崩壊後と厳しい世相だったが、申し込みが殺到。瞬く間に完売となった。新さくら丸のクルーズが行われた翌年7月、「飛鳥」も世界一周クルーズの96年実施を発表。こちらも満船になる。また商船三井客船も、新さくら丸を使ったピースボートでの経験を活かし98年から「にっぽん丸」で世界一周を始める。そして2001年には、「ぱしふぃっくびいなす」も後に続いた。

夢にまで見た客船をピースボートが!

まだ旅客機の旅が一般的ではない1950~60年代。欧州と北米を結ぶ定期航路客船(オーシャンライナー)が活躍していた。当時の花形オーシャンライナーとして知られた船に「エンプレス・オブ・ブリテン」と「クングスホルム」がある。21世紀に入り、これらを立て続けにチャーターしたのがピースボートクルーズだ。「トパーズ」(元エンプレス・オブ・ブリテン)で世界一周を17回、そして「モナリザ」(元クングスホルム)で2回。トパーズ引退の日に大さん橋に駆けつけ、モナリザを船内見学した中村画伯は、夢にまで見た船を前に感激が止まらなかったという。

Social Good Photography inc.

オセアニックの名残は思わぬところに

「モナリザ」に続くチャーター船は「オセアニック」。1965年に建造され、イタリアの船社で運航を開始した。当時は画期的だったベランダ付き上級船室を持ち、トップデッキに広いプール付きのリド・エリアを設け、電動式のガラス屋根で開閉するという「ほぼ純クルーズ客船」だった。そして美しい外観から「大洋の貴婦人」と称された。その貴婦人が2009年からピースボート世界一周クルーズに就航。2012年5月まで活躍したオセアニックの名残は、じつは「パシフィック・ワールド」にひっそり残っている。その号鐘がホイールハウスバー入口に置かれているのだ。

Social Good Photography inc.

サン・プリンセスとの不思議な縁

2013年、外国客船による初の本格的な日本発着・周遊クルーズが行われた。客船の名は「サン・プリンセス」。2019年、JTBは同船をチャーターし世界一周クルーズを実施。これにはピースボートの過去乗船者も多く参加した。そしてニューヨークで、ピースボートの「オーシャンドリーム」と同日入港。異国の地で現在と過去のピースボート乗船者が再会を楽しんだ。2020年には東京五輪のホテルシップ(横浜)となる予定だったが、コロナ禍でご破算に。宙に浮いた同船をチャーターしたのがピースボートクルーズ。船名も「パシフィック・ワールド」と改名する。

Social Good Photography inc.

注目度の低い寄港地こそが宝物

世界中のクルーズ客船を取材している吉田編集長。クルーズの良さは「船がいろんなところに連れていってくれること」と言う。 特に注目度の低い寄港地こそ、後から考えると記憶に残ったりするらしい。編集長が最も印象深いと挙げたのがフェロー諸島(デンマーク)。出港のシーンでは島の断崖絶壁に羊がわーっと走ってきて、本当に夢のようだったそう。世界一周にもそんな「隠れ名寄港地」が多いという。ポートルイス(モーリシャス)、テネリフェ(スペイン)、プエルトケツァル(グアテマラ)。そんなノーマーク寄港地こそ、意外な出会いが待っているかも。

Social Good Photography inc.

100日間のクルーズを楽しむアドバイス

吉田編集長からは、100日以上の世界一周クルーズをより楽しく過ごすコツも伝授された。第一に、ピースボートクルーズならではの自主企画を、自分で立ち上げること。自らが講師になるなど新しい挑戦ができる。第二に、旅の恥はかき捨て。ふだんなかなかできないこと、例えば船内のサロンに行って、思い切って金髪にしてみる。ピンクのネイルをしてみる。水着を持ってきたら、船では必ず着てみる。ふだん着ないような服を身に着け、寄港地で派手な民族衣装を買ってみる。こうして、100日を超える世界一周という非日常を目一杯楽しんでほしい、と。

Kataoka Kazushi

ピースボートクルーズにノーベル賞を!

2017年、ピースボートが運営団体を務める「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」がノーベル平和賞を受賞。2025年にはノルウェーのノーベル平和センターと提携協定を結び、船上で日本被団協のノーベル平和賞受賞(2024年)に関する洋上特別展を開始している。 ノーベル平和賞に2つもコミットしているクルーズ船社は世界でピースボートクルーズだけ。このトークショーは中台緊張下の台湾海峡の上で行われた。しかし、そんな東アジア諸国地域に暮らす人たちが同じ船でいっしょに世界をめぐっている。次はピースボートクルーズがノーベル平和賞をもらう番かもしれない。

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