新たな発見に出会うショートクルーズ-航海作家体験記-
日常を離れ、洋上に広がる開放的なひとときを心ゆくまで満喫できるクルーズ旅行。なかでも、船旅のこだわりがギュッと凝縮されたショートクルーズは、地球一周の船旅の経験者はもちろん、長期休暇が取りにくい方や船旅経験がないので不安…という方にもおすすめです。今夏のショートクルーズに、航海作家のカナマルトモヨシさんに乗船いただきました。
新しい発見と感動が待つ世界一周クルーズの資料をお届けします[無料]
文・構成:カナマルトモヨシ(航海作家)
日本各地のみならず世界の五大陸をクルーズで訪問した経験を持つ航海作家。世界の客船を紹介する『クルーズシップ・コレクション』での執筆や雑誌『クルーズ』(海事プレス社)に連載記事やクルーズレポートを寄稿している。
カナマルトモヨシさん 公式ブログ
40年の歴史を感じる、子どもたちの乗船
18歳以下は無料の日本一周クルーズ。夏休みに子どもとピースボートクルーズ体験を!という乗船者が多く、子どもの数も250人以上に。そのためキッズプログラムが組まれたが、これが実に面白い。現役航海士が登場して船に関する講座をしたかと思えば、その時子どもから出た質問に答えるため、後日船長が登場。親子とともに船長との記念撮影タイムもあるなど、大人から見てもクオリティの高いプログラムだ。また、かつてのスタッフや乗船者が親になり子どもを連れて再乗船、というケースも目立つ。ピースボートクルーズ40年の年輪を感じる船旅でもある。
もし東松島に国際港ができていたら…
最初の寄港地は石巻(宮城県)。列車に乗って東松島市の野蒜(のびる)駅で下車し、レンタサイクルで鳴瀬川の河口へ向かう。明治初期、横浜より先にここで日本初の近代港湾の建設が進められた。だが、完成直後の台風で突堤が崩壊。施設はそのまま放棄され、いまは「野蒜築港跡の石碑」が建つだけ。ここから石巻港に停泊するパシフィック・ワールド号が見えた。いま野蒜港があったら、ピースボートクルーズの世界一周はここから出航し、東日本大震災のボランティア(PBV)も東松島に集っていたかもしれない。幻の国際港には、ただ波の音だけが響いていた。
「津軽海峡・夏景色」を堪能し函館へ
早朝、竜飛(たっぴ)崎が見えた。石川さゆりさんの名曲『津軽海峡・冬景色』にも登場する、「(本州の)北のはずれ」だ。岬を過ぎ、青函連絡船の代わりに青森と函館を結ぶ津軽海峡フェリーの船舶と行き交う。フェリーがあとにした陸奥湾をはさんで津軽と下北の両半島が見え、左舷側には松前半島を望む。そこは北海道。やがて、まるで牛が寝そべっているような山容の函館山が目前に迫り、そびえる五稜郭タワーが見えてくる。接岸する若松ふ頭には青函連絡船最後の日まで運航していた摩周丸が記念館として保存されていた。『津軽海峡・夏景色』を堪能する、函館入港だ。
日本海がカリブ海に。気分は世界一周!
釜山入港前日、プールデッキでワールドビアガーデンが開催された。バーには世界各国のビールが並び、ダイキリやピニャ・コラーダも登場。会場にはサルサミュージックが流れ、船内で連日行われているサルサレッスンの参加者が華麗な踊りを披露する。日本海はカリブ海へと一変した。夕方は金沢から乗船したニュージーランドの先住民族・マオリの子どもたちによる民族舞踊「ハカ」の迫力あるダンスに圧倒され、夜はペルー出身のパフォーマー『イジャイ』による南米音楽に身をゆだねる。日本一周の終日航海日、世界一周クルーズ気分を満喫したのだった。
釜山駅前でシルクロードを感じるランチ
釜山に寄港した。釜山駅近くにロシアなどで使用されるキリル文字の看板を掲げる店が軒を並べる一角がある。ある店頭には、ウズベキスタンの食材や民族衣装が並ぶ。まるでかの国のバザールにいるかのよう。奥はレストランだった。店主はロシア系の男性で、女性の従業員や客はいずれも中央アジアの民の容貌を持つ。ソ連崩壊後、中央アジアから韓国にやってきた人々がここに暮らす。羊肉のラグマン(中央アジアでポピュラーな手延べ?)とシャシリク(旧ソ連圏諸国で人気の肉の串焼き)を注文。韓国にいるのに、胃袋は壮大なシルクロードを感じる。
「世界の記憶」朝鮮通信使を釜山に訪ねて
釜山地下鉄の佐川駅から少し歩くと、朝鮮通信使歴史館がある。朝鮮通信使は江戸時代、12回にわたり李氏朝鮮国王から徳川将軍の代替わりのたびに江戸まで派遣された外交使節。通信使とは「信(よしみ)を通わす使節」の意味で、両国の信頼関係を深めあう性格を持ち合わせていた。2017年、「朝鮮通信使に関する記録」がユネスコ「世界の記憶」に登録。同時に歴史館の展示もリニューアルされ、映像や日本語でその意義を無料で知ることができる。今回のクルーズのゴールは東京。日韓共催クルーズも行うピースボートクルーズは「21世紀の通信使」なのかもしれない。
万国の架け橋=パシフィック・ワールド号
那覇入港の3日前、沖縄都市モノレール(ゆいレール)の3両化車両の運行が始まった。それに偶然乗ることができた。混雑が緩和された車内から楽しむ那覇空中散歩は快適。沖縄県立博物館(おきみゅー)へ行き、万國津梁の鐘(旧首里城正殿鐘)を見る。1458年に鋳造された和鐘には、かつて琉球王国が海洋国家としてアジアの国々と交易する中で、万国の「架け橋」として活躍したことが刻まれている。パシフィック・ワールド号にもアジア諸国の人々が集い、ともに世界をめぐる。これはまさに「万国の架け橋」ではないか。そんなことに気づいた、那覇の一日だった。
新たな発見に出会うショートクルーズ
19日間にわたる日本一周クルーズはパシフィック・ワールド号のインサイドキャビンを利用した。筆者は、基本眠っているときくらいしかキャビンにいない。デッキで普段見ることのない海からの景観を楽しみ、さまざまな船内企画に参加するなどアクティヴな洋上生活を送る。だから窓の有無は問題ではない。室内での執筆や読書などにとても集中でき、電灯を消せば午睡も思いっきり楽しめる。インサイドキャビンは思った以上に快適でゼイタクな時を過ごせる。これは、新たな発見だった。そして世界一周とはひと味違った楽しみ方も見つかる。それがショートクルーズだ。
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