虹の島ハワイに導かれて
南太平洋に広がる”ポリネシアン・トライアングル”、その広大な文化圏の北端に位置するハワイ。世界有数のリゾート地として知られるホノルルは、先住民族の言葉で「護られた入り江」を意味し、その名の通り、荒波の影響を受けにくい地形から太平洋の海運の要所として栄えてきた歴史があります。南の楽園で育まれたポリネシア文化や先住民族の伝統を受け継ぐ人びととの出会い、そして美しい海に彩られた雄大な自然——リゾートアイランドの側面だけではない、ハワイのさまざまな魅力にふれる旅へと出かけます。
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文・構成 / 編集部 写真 / PEACE BOAT
フラを通してふれるハワイアンの心
色鮮やかな衣装に身を包み、流れるような動きで優雅に舞うフラは、日本人にも馴染みの深いハワイアンカルチャーのひとつです。フラは元々、文字を持たなかったハワイの人びとが神や自然への信仰、身の回りの出来事などを後世に伝える手段として広まったといわれています。現在ではパフォーマンスや趣味としてのイメージも強いフラですが、ハワイの人びとにとっては、歴史的にも重要な意味を持つ文化なのです。その動きの意味を知ってふれるフラからは一味ちがう、温かみのあるストーリーを感じます。
正式なフラの指導者「クム・フラ」の称号を有するアーティストのサンディーさんは、フラを通してハワイの伝統文化を教えてくれます。洋上で繰り広げられる優雅で美しいステージはもちろんのこと、ダンスのレッスンや動きに込められた意味を学ぶワークショップも毎回大好評です。ひとつひとつの動きの意味を教わり、ただ身体を動かすだけでなく、音楽にのせた物語やハワイアンの考え方を学びます。 かつてポリネシアの人びとが行き交った南太平洋の海を眺め、その海の上でフラの精神性にふれれば、ハワイへの寄港がさらに楽しみになります。
伝統的な暮らしを体験
洋上でハワイアンの心にふれたところで出かけたのは、ホノルルの港からバスで1時間以上の山間に位置する「カアラの谷」。ここでは先住ハワイアンから受け継がれてきた暮らしや文化の根底にある、ハワイアン・スピリッツを学びます。ハワイの先住民族はかつて、谷の合間の川が流れる土地に集落を築き、主食となるタロイモの栽培などで生活を営んできました。ここは、一度は廃れてしまった土地を再び開墾し、かつての生活を現代に甦らせた大切な場所。ガイドブックには載っていない、ハワイの素顔と出会えた気がします。
今ではカアラの谷は、地域の子どもたちをはじめ、各地から多くの人びとが訪れる場所です。早速、畑仕事を体験し、おなかがすき始めたところで、タロイモを用いた伝統料理「ポイ」作りに挑戦です。蒸したタロイモはサツマイモと里芋を合わせたような味で、ほんのりとした甘みが特徴。そんなタロイモをマッシュしたポイは、お餅のようなモチモチ食感で、口にするたびについ笑みがこぼれます。カアラの谷で過ごしたひとときは、ハワイアンの伝統文化が、雄大な山々や清らかな川とも大きく結びついていることを学ぶ時間となりました。
ホノルルの自然と文化
世界的なリゾート地・ホノルルからは、定番の観光スポットもぜひ訪れたいところ。約30万年前の噴火によって形成された死火山のダイヤモンドヘッドは、オアフ島のシンボルともいうべき場所です。標高は232メートル、トレッキングコースも1キロ少々と、ハイキング感覚で登ることができます。頂上からのパノラマビューを見渡せば、この島の美しさに改めて気づかされます。ダイヤモンドヘッドの眼下に広がるワイキキビーチをはじめ、ハナウマ湾やラニカイビーチなどの美しい海辺で過ごすひとときも、どうぞお忘れなく。
ホノルル郊外に位置するビショップ博物館も、ポリネシアの豊かな文化にふれられるスポットです。ハワイに博物館のイメージはないかもしれませんが、ここは全米5大博物館のひとつにも数えられる、ハワイ州最大の博物館。19世紀末、カメハメハ王家最後の直系子孫の遺志を継いで設立され、太平洋ポリネシア全域の美術・工芸品など2,400万点以上の収蔵品を誇ります。なかでも、ハワイ諸島にポリネシア人が移住してきた時代からハワイ王朝時代にかけてのコレクション、とりわけ王家伝来の美術工芸品の数々は必見です。
No Rain, No Rainbow
天候が変わりやすいハワイでは、通り雨に遭うこともしばしば。しかし一雨去った後の空には、大きな虹がよくかかります。虹は幸運の印としてハワイアンに愛されており、「No Rain, No Rainbow (雨が降らなければ、虹は出ない)」、つまり、困難の後には幸せがやってくるという意味のことわざがあるほど。また虹は、ハワイにさまざまなルーツの人びとが集まって成り立っている場所であることの象徴でもあります。こうしたポジティブさや寛大さこそ、ハワイが世界中の人びとを惹きつける一番の理由なのかもしれません。
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