クルーズコレクション

船舶専門画家・中村辰美さん初乗船体験記

船舶専門の画家として数多くの客船を描き、その魅力を発信し続けている中村辰美さん。この度、中村さんがはじめてピースボートクルーズの客船「パシフィック・ワールド号」に乗船し、横浜から香港を旅しました。中村さんが見つけた、新しい船旅の魅力を描きおろしのイラストとともに迫ります。

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PUNIP cruises/中村辰美 船舶専門のイラストレーター、画家
1957年東京生まれ東京在住。中学時代の伊豆大島までの船旅で船の魅力に取り憑かれ、船好きのイラストレーター故柳原良平氏の著書に感銘を受け、船の絵を描き始める。会社員生活の傍ら、独学で描いた船の絵をインターネットで投稿しているうちに船舶業界から認められ、2018年に船専門のイラストレータとして独立。最新刊「船体解剖図KAI 改 ナゾに満ちた船の内部を徹底図解!」イカロス出版(2026年10月21日発売)

文・構成 カナマルトモヨシ

©2026punipcruises

居酒屋 波へい

居酒屋があるのは、世界にクルーズ客船多かれど、パシフィック・ワールド号だけでしょうね。それはデッキ14のビュッフェレストラン「ホライゾンコート」に隣接しています。日中はハンバーガーなどが食べられるテラスグリルなのですが、灯ともし頃になると、赤ちょうちんが吊るされて居酒屋に変貌するのです。メニューは焼き鳥、枝豆、たこ焼き、焼酎など日本の居酒屋そのもので、世界中のどこにいてもガード下でのちょっと一杯気分が味わえるのが面白い。本物の居酒屋と違うのは、逆にピースボートの世界一周の船旅ポスターが無いことぐらいかもしれませんね。

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ピースボートセンター

パシフィック・ワールド号はもともと「サン・プリンセス」という客船でした。その当時のインターネットカフェを改装したのがピースボートセンターです。毎日の船内新聞を見ていると、船側の企画、ピースボートの企画、乗客の自主企画とこれでもかというぐらいのイベントが船内各所で行われています。そんなイベントを数多くのスタッフが企画し、調整し、手助けしているのがこの部屋です。外には乗客に対応するカウンターもあります。すごいなあ、と思うのは老いも若きも乗客がカウンターのスタッフになったりすること。ほかの客船では見られぬ光景に、ピースボートの面白さを感じます。

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子どもエリア (サンクチュアリ)

「サン・プリンセス」時代は小さなプールもある有料の隠れ家風サンデッキでした。「サンクチュアリ」という名はサン・プリンセスから引き継いでいます。パシフィック・ワールド号になってからは、無料で誰でも出入りができる「大人の隠れ家」に。乗船者のなかでも知る人ぞ知る空間として、ひそかな人気がありました。ただ、現在は子ども向けの簡単な遊具があり、大人はリラックスチェアで見ていることが出来る子どもエリアになっています。残念ながらあまり利用者は見かけませんでしたが、まだクルーズが始まったばかりですし、お子さん連れの乗船者にはいいスポットでしょう。

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操舵室

パシフィック・ワールド号の前身「サン・プリンセス」がイタリアのフィンカンティエリ造船所で産声を上げたのは、いまから31年前の1995年でした。1990年代といえば、「飛鳥」(初代:現在はアマデア)や「にっぽん丸」(残念ながら今年5月に引退)といったクルーズ客船が誕生しています。同時期の日本のクルーズ客船と違ってナビゲーションチェアの備わった非常に近代的な操舵室でした。コンソールには計器盤が無く、大半が大画面のディスプレイになっているので、もしかしたら建造後に大改造したのかもしれません。左右のウイングブリッジの床はシースルーになっています。

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フリースペース

元はスロットマシンやルーレットなどが所せましと並べられたカジノルームでした。パシフィック・ワールド号も外国(パナマ)船籍で公海上を走るので、合法的に賭け事は出来るはず。ですが、ゲーム類、テーブルは全て撤去され、各種教室や少人数の講演などさまざまなイベントに使用できるフリースペースとよばれる広い多目的室になっているのが、ピースボークルーズらしさを感じます。天井や柱、バーカウンターなどカジノ時代を思わせる装飾が隅々に残されているのが面白いです。奥には卓球台も存在し、朝から晩までにぎわっていました。小さいながらも図書コーナーもあります。

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ショップ

サン・プリンセス時代は高級ブランド品や宝飾類、免税品を販売するショップが軒を並べていました。でも、パシフィック・ワールド号になってから、それらは姿を消しました。これはこのサイズの外国航路のクルーズ客船としては非常に珍しいことです。当時の名残をとどめるのは左舷側のショップのみ。カジュアルでスポーティなウェアの品ぞろえが充実し、お菓子、カップラーメン、文房具といった日本のコンビニにあるような品物もたくさん売っています。また、右舷側は水彩画などの各種カルチャースクールに利用されるイベントルーム、さらにノーベル平和賞洋上特別展となっています。

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香港の港と船

パシフィック・ワールド号は香港に入港しました。その内港地区であるビクトリアハーバーは超高層ビルが林立する九龍半島と香港島に囲まれた美しい港。古くから両岸を往復する連絡船のスターフェリーやマカオを始めとした近隣の島々に行く客船、ジャンク帆船風遊覧船などが行き交い、船好きの目も楽しませてくれます。クルーズ客船の発着地としては、かつての啓徳空港の滑走路の跡地に建設されたカイタッククルーズターミナルの巨大さと、戦前から存在するオーシャンターミナルが外観はそのままなのに内部は現代風のショッピングセンターに様変わりしていることに驚かされました。

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