ピースボートの旅はあとからじっくり効いてくる
ニュース番組からワイドショーまで数多くのテレビ番組に解説者として出演し、数々の著書をも手掛けている高橋さん。水先案内人として幾度も乗船した経験から、ピースボートクルーズならではの魅力についてお話いただきました。
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高橋和夫さん(国際政治学者、放送大学名誉教授)
世界情勢をわかりやすい言葉で話してくれる国際政治学者で、解説者として数多くのテレビ番組に出演。また世界の複雑な問題を鋭く、かつ分かりやすく解説してくれる講座は、毎クルーズ人気が高い。著書に『ロシア・ウクライナ戦争の周辺』(GIEST)、『アラブとイスラエル パレスチナ問題の構図』(講談社現代新書)、『イランとアメリカ 歴史から読む「愛と憎しみ」の構図』(朝日新書)、『中東から世界が崩れる イランの復活、サウジアラビアの変貌』(NHK 出版新書)など。
高橋和夫さん 公式ブログ
きっかけはエリトリア
まだ水先案内人として乗船する前、街中で見かけたピースボートのポスターで寄港地の一つにエリトリアを挙げていて、行ってみたいと思いました。というのも、かつてクウェート留学中にエリトリア人の同級生がいたから。とてもいいやつで、彼のおかげでエリトリアの存在を知りました。当時はまだ国ではなくエチオピアの一部で、過去には欧米諸国の植民地だった歴史をもつ場所でした。独立を求めて立ち上がったエリトリア人たちは、長年の闘争を経て1993年に独立を達成しました。その後、水先案内人の打診を受けたとき、確認するとエリトリアに寄港するということだったので、それならばと乗船しました。
目が覚めるとエリトリア
インド洋を抜けたある日、朝に目が覚めるとデッキの外にエリトリアのマッサワ港がありました。ついにクウェートでの同級生の国にやってきたのです。ここでは独立闘争の話を聴き、「インジャラ」という甘くないクレープのような料理を食べた思い出がありますね。この街の印象は“何もない”でした。あったのは、十分過ぎる暑さ、そしてピンと背筋を伸ばした誇り高き人びとの姿でした。時が経ち数年前、上海で偶然出会ったエリトリア人の家族と話をする機会があったのですが、私がエリトリアに行ったことがあると伝えると、彼らはとても喜んでいました。その時、私は、あのマッサワの暑さを思い出しました。ピースボートの旅は、何年後かにじっくりと効いてくることを感じた瞬間でしたね。
大都市を船で体感する
観光地でない国を訪れるのもピースボートの面白さでありますが、もちろん有名な都市を船で訪れる魅力は言うまでもありません。たとえば上海という都市は、飛行機で行ったのではその巨大さを実感できません。船で揚子江を上って上海に近づくとクレーンの列が延々と続き、“魔都”とも呼ばれる上海の大きさと経済発展を視覚的に確認できます。あるいはニューヨークを船で訪れる経験も格別ですね。ゆっくりと船でマンハッタン島に近づくと、自由の女神像が視野に入ってくるんです。最初はボンヤリと、次第に鮮明に。これが、ヨーロッパからの移民が最初に見た風景です。そうした人々の経験を追体験しているような思いにとらわれます。
クルーズで感じる国際情勢の手触り
ピースボートがどこに寄港するかを見ていると、国際社会の流れがわかって勉強になります。たとえば、リビアの最高指導者のカダフィが西側寄りに舵を切り始めた頃、ピースボートはこの国を訪れています。中国の一帯一路構想におけるスリランカや、ギリシャのピレウス港の開発・整備を目の当たりにすると、国際情勢の動きに実際に手を触れているような気がします。また中東地域はいま、全体的に大変な状況のなかでヨルダンは安定しており、各国が王制をささえようとして日本の皇室とも良好な関係を築いています。ペトラ遺跡などの観光を楽しむとともに、このような社会情勢にもぜひ目を向けてほしいですね。
北欧の福祉国家づくりは参考になる
これまでで印象に残っている寄港地はたくさんありますが、クロアチアのドブロブニクは圧倒的に美しかったです。最初に行ったときは内戦で街が傷ついて痛々しかったのですが、次に訪れたときは復興して観光地になっていて驚いた記憶があります。ほかには、北欧の景色も印象的でした。北欧の国には、これからの日本が参考にすべき点が多くあると思います。北欧は小国でありながら、福祉を第一に幸福度の高い国をつくっています。それが一体どういうものなのかを直接見聞する。寄港地を訪れたらそういう点も見てほしいと思います。
多世代が交流できるクルーズ生活
ピースボートの魅力は、訪れる場所だけではなく、船の中もまた、多様な文化にあふれた空間です。ほかのクルーズ旅行は高額で若い人はあまり乗船していませんが、ピースボートには若い人も乗船しているのが特徴だと思います。シニアの方も多くて、世代や立場を超えて語り合い、一緒に楽しむ多世代交流型の船旅です。もちろん、世界を見ることも大きな魅力だが、船の中での交流を通して日本人社会の縮図のようなものを見られるのが素晴らしいと思います。
好きなことに集中できる洋上の時間
洋上では、時間がゆっくりと流れるのが最高だと思います。電話も鳴らないし、原稿の催促もない(笑)。適度に運動もできて食事も美味しいし、とても豊かな時間が流れています。考える時間がたくさんあって、ひとつのことに集中できるので、長文も書けますし。本好きな人には読書も最適ですよ。私はよく海を眺めるのですが、朝日と夕陽に照らされる海、それに夜の海が好きですね。「洋上は退屈なんでしょう?」と聞かれることもありますが、まったくそんなことはないです。まわりでも退屈している人は見たことがないですね。
何度乗ってもおもしろい
私は仕事柄テレビに出たり講演に呼ばれたりしますが、その内容が気に入ってもらえるとディレクターや主催者からまた声がかかります。ピースボートにも何回も招かれているのは嬉しいですね。
船に乗る楽しみは、過去の乗船者との再会です。つまり何度乗っても価値がある、おもしろいと多くの方々によって評価されているわけです。何よりもそのことが素晴らしい船旅であることを物語っているので、ぜひ存分に堪能してほしいと思います。
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