世界一周で出会う絶景の紅葉
赤や黄に色づいた木々が風景を彩る紅葉は、秋という季節の中でも限られた期間だけ目にすることができる自然の芸術。世界的な紅葉のメッカとして知られるカナダのメープル街道では、およそ800キロメートルにわたってメープル(カエデ)の木々が辺り一帯を染め上げます。この季節にしか味わえないこの地の魅力を、世界各地を旅した経験をもつ写真家の水本俊也さんに伺います。
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◆水本俊也さん
写真家。鳥取県出身、横浜市在住。学生時代にヨット部に在籍、海をこよなく愛す。客船写真師を経て、フリーの写真家となる。2004年よりピースボートクルーズに乗船し、世界各国で撮影を続けている。日本写真家協会会員(JPS)。
紅葉の中を進むシーニッククルーズ
シーニッククルーズの舞台となるのは、カナダ東部、ナイアガラの滝と大西洋を結ぶセントローレンス川です。1年のうちわずか30日間弱という限られた期間、メープルやオーク、ポプラ、シラカバなど、色とりどりに染まった木々が岸沿いを埋め尽くす絶景が姿を現します。セントローレンス川のように川幅の広い大河をクルーズ客船で進むのは、日本ではできない体験。穏やかな流れの川を滑るように航行しながら、刻々と変化する景色を半日ほどかけて堪能します。水本さんはその醍醐味を、「ダイナミックな自然と紅葉が織りなす風景に包まれる感覚」なのだと話します。
秋といってもカナダ東部の気温はかなり低く、デッキに出ると凛とした空気に包まれます。セントローレンス川の河口付近では広かった川幅も、ケベック・シティに差し掛かる辺りから徐々に狭くなり、そびえ立つ山々が間近に迫ってきます。赤や黄色、オレンジに色づいた燃えるような紅葉のほかにも、常緑樹の緑や空の青、水面の色などさまざまな自然の色彩があり、その美しさはまさにワールドクラス。この季節、この場所だからこそ目にすることができる雄大な光景がどこまでも広がります。水本さんも、この風景には二大運河やフィヨルドに匹敵する感動があると太鼓判を押します。
新旧が融合する街を歩く
セントローレンス川をクルージングした翌日に訪れるのは、旧市街、ダウンタウンのそれぞれに見どころがあるモントリオールの街。船を降りて港から10分ほど歩くと、旧市街のランドマークともいうべきモントリオール大聖堂が見えてきます。重厚感のあるネオ・ゴシック様式の外観だけでも見応えがありますが、この聖堂の見どころは絢爛豪華な内装にあります。建物の中に一歩足を踏み入れると目に飛び込んでくるのは、コバルトブルーの光に照らされた黄金の祭壇と、きらめくステンドグラス――金と青のコントラストが私たちを包みます。
セントローレンス川沿いの道を歩くと、石造りの歴史ある建物と紅葉が織りなす素晴らしい風景が堪能できます。また、高層ビルが建ち並ぶダウンタウンに足を運べば、カナダ第二の都市といわれるモントリオールの活気にふれられるでしょう。ダウンタウンからはぜひ、世界最大の地下街としても有名なモントリオール地下街へ。メープルフレーバーのお菓子やサーモンの缶詰といった定番のお土産をはじめ、何でも揃うショッピング街は眺めているだけで気分が華やぐもの。本場のメープルシロップ専門店で、風味豊かなシロップの食べ比べも大きな楽しみです。
紅葉に彩られた世界遺産の街並み
モントリオールに続いては、北米最古の街といわれる古都ケベック・シティへ。この街の旧市街は、入植当時の景観が色濃く残っていることから世界遺産にも登録されています。紅葉に染まる街へと船が入ってゆく、美しい入港シーンも大きな見どころです。港から街までの距離も近く、船を降りて少し歩けば、紅葉に彩られた世界遺産の街並みが広がります。
ケベック・シティの旧市街は、坂の上に築かれたアッパータウンと川辺に広がるロウワータウンに分かれており、丘の上から見下ろす紅葉とふもとから見上げる紅葉、ふたつの景色を楽しむことができます。
そして、ケベック・シティを訪れたらぜひ行ってほしいと水本さんが勧めるのが、アッパータウンの中心にそびえる古城のようなホテル「フェアモント・シャトー・フロンテナック」。各国の大統領やエリザベス女王、喜劇王チャップリンも宿泊したことのある、格調高いホテルです。セントローレンス川を見下ろす最高の立地に建っており、ホテル前からは、紅葉と歴史ある街並み、そして港に停泊する船を見渡す大パノラマを望むことができます。宿泊客でなくとも利用できるレストランやバーもあるので、クラシカルなシャトーの雰囲気に浸ってみるのも一興です。
雄大な自然と紅葉のハーモニー
また、街の郊外に位置するモンモランシーの滝も、ぜひ足を運びたいスポットです。セントローレンス川とモンモランシー川の合流地点にあるこの滝は、ナイアガラの滝以上の落差を誇ります。大量の水が勢いよく流れ落ちる様子は、豪快そのもの。ケベック・シティのように、下からの眺めと上からの眺め、二通りの眺望が堪能できることもポイントです。特に、滝の上にかかる吊り橋での、鳥のような視点で辺り一帯の風景を見渡すことができる空中散歩は迫力満点。ダイナミックな滝と色とりどりの紅葉が織りなす、大自然のハーモニーが堪能できます。
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