クルーズコレクション

世界屈指の美を訪ねて

サンクトペテルブルグ(ロシア)

かつてロシア近代化の礎を築いたピョートル大帝の都市計画により建設された帝政ロシアの首都・サンクトペテルブルグ。続くエカテリーナ2世の時代には現在のエルミタージュ美術館が建てられ、これを礎にロシア文学が花開くなど、ヨーロッパを代表する芸術都市となりました。歴史的建造物が建ち並ぶ街並みはヨーロッパでも随一の壮麗さ。ここは、ロシア観光のハイライトであり、観光客がもっとも訪れる街でもあります。文化と芸術に彩られ、数えきれないほどの見どころを抱えたサンクトペテルブルグの”美”にふれる旅に出かけます。

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文・構成 / 編集部 写真 / PEACE BOAT

Ⓒ Matsuda Sakika

サンクトペテルブルグは美の宝庫

「西洋に開かれた窓」として、ネヴァ川の周囲に築かれたロマノフ王朝の都サンクトペテルブルグ。街の名前は、ピョートル大帝の守護聖人・聖ペテロにちなんで命名されました。ピョートル大帝の野望は、当時は後進国だった帝政ロシアを国力だけでなく文化的にもヨーロッパ列強諸国と同等の水準にすることでした。その夢を実現させたのが、女帝・エカテリーナ2世です。彼女は住まいとしていた冬の宮殿に壮麗な離れを増築し、美術品のコレクションを陳列して私的なサロンとして楽しみました。これが、世界三大美術館のひとつ「エルミタージュ美術館」のはじまりです。

Ⓒ Matsuda Sakika

本館となる冬の宮殿をはじめ、大エルミタージュ、小エルミタージュ、新エルミタージュ、エルミタージュ劇場には、各時代の西洋美術のコレクションを中心に、300万点にも及ぶ美術品などが所蔵されています。建物自体や館内の装飾も美しく、細部まで贅を尽くした絢爛豪華な内装や天井画を一目見ようと、今日も世界中からたくさんの観光客が訪れます。ちなみに、ロシアは観光にもビザがいる国で、飛行機で行くには少々手間とお金がかかりますが、クルーズ船での訪問はオプショナルツアーに参加する場合のみ、ビザなしでの入国が許されているので楽に訪問できました。

エカテリーナ宮殿へ

皇帝の夏の避暑地として有名な「エカテリーナ宮殿」。水色を基調とした外壁と白い円柱や金の装飾が美しく、宮殿内部も絢爛豪華な装飾で飾り立てられています。中でも、18世紀末にロシアに漂着した伊勢の商人・大黒屋光太夫がエカテリーナ2世に謁見した大広間は必見です。ヴェルサイユ宮殿の鏡の間を模してつくられたこの広間は金色の彫刻で埋め尽くされ、自然光が金や鏡に反射する豪勢な空間です。また、『ロシアの勝利』と題された壮麗な天井画も大きな見どころです。エカテリーナ2世に愛された、琥珀と黄金で覆い尽くされた「琥珀の間」も見逃せません。

Ⓒ Okuhira Keita

噴水が美しい夏の宮殿

エカテリーナ宮殿と並び有名な皇帝の避暑地が、ピョートル大帝の築いた夏の離宮です。この宮殿は、海に向かって階段状に低くなっています。一番高い場所にはフランス式庭園が配されており、次にヨーロッパ風の大宮殿、そして一番低い土地に、さまざまな工夫を凝らした大小150以上の噴水で知られる「下の公園」があります。これらの噴水はすべて土地の高低差を利用しており、電力などは一切使われていないというから驚きです。水と緑、精緻な彫刻が目にも楽しい庭園を散策すれば、避暑地としてに建てられた宮殿にふさわしい涼しげな雰囲気が楽しめます。

血の上の救世主教会

カラフルなたまねぎ型をした、ロシア正教の伝統的なシルエットが目を惹く「血の上の救世主教会」も、サンクトペテルブルグの大きな見どころ。カラフルな外観とは裏腹におどろおどろしい名前は、時の皇帝アレクサンドル2世が暗殺された場所に追悼の意を込めて築かれたことに由来しています。教会の内部は、壁面はもちろん天井に至るまで外観にも負けない鮮やかで精緻なイコンや絵画、装飾文様で埋め尽くされています。その総面積は、7000平方メートル以上にもなるのだとか。宗教画に包まれた荘厳で幻想的な空間に身を置けば、この教会がロシア・モザイク芸術の最高傑作と称されることにも納得です。

歴史を物語る大通り

街の中心部を東西に貫くネフスキー大通りは、帝政ロシア時代から目抜き通りとしてにぎわってきました。今も18世紀から20世紀初頭の建物が数多く建ち並び、当時の面影を伝えています。さまざまな建築様式を一度に見ることができる通りは、博物館さながら。ドストエフスキーやトルストイが新作を発表した文学サロン・ベナルダキ邸や、あのロシア料理の名前の由来にもなったストロガノフ伯爵の宮殿、18世紀のショッピングセンター・パサージュ百貨店など、帝政ロシア時代を彷彿とさせる建物が建ち並んでいます。 帝政ロシア時代の美にふれる旅は、ロシアの近代化を辿る旅でもありました。

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