世界遺産アカデミー認定講師片岡英夫さんが語る『夢とロマンの世界遺産』
地球でもっとも隔絶された「絶海の孤島」イースター島。約1000体ものモアイ像が佇む美しき島は、世界中の人びとを魅了してやみません。ミステリアスな石像文明に彩られたイースター島の魅力を、世界遺産マイスターの片岡英夫さんに伺いました。
写真 / Nakamura Mitsutoshi
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◆片岡 英夫さん
NPO法人 世界遺産アカデミー認定講師
旅行地理検定・1級試験で日本一位を獲得し、「海外旅行地理博士」の称号を得る。以後、5期連続日本一になり、日本で初めて「海外旅行地理名誉博士」の認定を受ける。世界遺産検定の最高位「世界遺産検定マイスター」に第一期生で合格。ピースボートクルーズにも水先案内人として乗船し、数々の世界遺産講座を実施。
片岡英夫さん 公式サイト
「大きな土地」に広がる南国らしからぬ特異な気候
1722年の復活祭(イースター)の日、オランダ人のヤーコプ・ロッヘフェーンが辿り着いたことから、その名がついたイースター島。現地の言葉では、「ラパ・ヌイ(大きな土地)」と呼ばれています。島を中心に半径2,000キロメートルの範囲にはほとんど島らしい島がなく、まさしく世界でもっとも隔絶された「絶海の孤島」です。 しかし同時に、この島は広大な海を有しているのだと解釈することもできます。これが、イースター島が「大きな土地」といわれる所以です。
横たわるモアイが示す過去
イースター島を世界的に有名にしているのは、なんといってもモアイ像の存在です。モアイは祖先の姿を偶像化したものだといわれ、集落の住居を見守るように建てられました。そのため、ほとんどのモアイは海を背に、島の内側を向いています。現存しているモアイ像のうち、立っているものは45体ほど。残りはすべて倒されているか途中で放棄されています。 少し離れた丘の上には、「旅するモアイ」がぽつりと佇みます。なんとこのモアイ像は1970年の大阪万博の際に、日本へ運ばれ展示されました。日本に来たというだけで、不思議と親近感が沸きます。
モアイが切り出されたのは、ラノ・ララクと呼ばれる丘。ここにあるモアイ像は400体近くと、全体の半数弱に及びます。島のあちこちに運ばれずにこの場所に放置されているということは、過去にこの場所で何かあったということ。 1722年にヤーコプ・ロッヘフェーンがイースター島を訪れたとき、モアイ像は立っていたという記録が残されています。そのおよそ50年後、キャプテンクックがこの地を訪れた際は、モアイの約半数が倒されていました。この50年の間に、イースター島に一体何が起こったのでしょう。倒れているモアイはすべて下を向いている――、これが謎を解く鍵となります。
移りゆく島と巨石文明の頂点
元々、火山島で岩ばかりだった島は、長い年月をかけ森林が形成されていきました。しかし人間が暮らし始めると、生活のために森を切り拓くように。モアイづくりのため、あるいはモアイ運搬のためにも木材を必要とした結果、森林は失われていきました。過度の開墾によって食料生産が減少し、食料は不足し、部族間の争いへと発展していきました。そして、多くの部族が力を誇示するために競い合うようにモアイを量産し、巨大化させていきました。 抗争において、人びとは勢力の象徴であるモアイをうつぶせに倒しました。モアイは、目をはめ込むことで「マナ」という聖なる霊力が宿るとされており、人びとはそれを恐れたのです。これが「モアイ倒し戦争」と呼ばれる争いで、ほとんどのモアイが下を向いて倒れている理由です。
モアイが見つめる文明の未来
この島に花開いた文明は、頂点を迎えたとき一気に崩壊へと突き進みました。ある学者は、その理由を「文明の暴走」に求めています。私たちの生活がパソコンや車を放棄して昔の生活に戻れないように、モアイ像を量産・巨大化させていったイースター島の人びともまた、一度大きくしたモアイのサイズを小さくしようとはしませんでした。
地球環境が悪化の一途を辿り、温暖化の進行を認識しながら、私たちの暮らす社会も、また持続可能性を度外視した利便性の追求を止められずにいます。モアイは失われた文明の忘れ形見――絶海の孤島に佇むモアイは自然の有限性を訴えているように思えるのです。
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◆世界遺産アカデミー認定講師の片岡英夫さんが語る
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